子どもの行事と祝いごと

手どもの健やかな成長を願い、祝う心は昔も今も変わりません。その気持ちが形となって、様々な行事が昔から伝えられてきました。それぞれの行事のしきたりは、時代と共に簡略化されてきていますが、地方では、独自のしきたりが残っているとこうもあるようです。お子さんの成長の節目として、あなたのご家庭にあわせたお祝いをされてはいかがでしよう。お祝いは心ですから、形にこだわることはないのですが、参考までに、しきたりをのせておきます。


お七夜・命名

生まれた日から数えて七日目に、名前を決め命名するお祝いです。古い習慣では母方の祖父が名付け親となって命名することが多かったようで、今でも、社会的地位のある人や両親の尊敬している人に頼んで、名付け親になってもらうこともあるようです。名付け親が命名書(奉書紙や美濃紙)を書き、神棚か仏壇に供えるのが正式とされますが、半紙に書いて赤ちゃんの枕元の壁や神棚の下、床の間など目立つところに貼ることもあります。へその緒とともに子どもが成長するまで保管して、一生の宝とするのが慣わしのようです。

■祝いのヒント

ちょうど退院の時期にあたります。名前が決まったら(出生届は、生まれた日も含めて十四日以内)、母親の出産の労をねぎらう気持ちもこめて、赤ちゃんの誕生・命名を身内でお祝いするとよいでしょう。

お宮参り

男の子は生後三十二日目、女の子は生後三十三日日に、土地の氏神様か母親の実家の氏神様に、お参りに行くのがしきたりです。古くは出産はけがれたものとされ、その忌み明けの儀式であるとか、氏子の一員として認めてもらう意味があるなどといわれています。お参りのとき、男の子は鳥居の左から入って右に出、女の子は右から入って左に出るなどの風習や、男の子は三十日・女の子は三十一目に参る、生後百日に参るなど、その土地土地によっての風習があるようです。母方の実家から贈られた祝い着(注)を着せ、礼装した父方の祖母が赤ちゃんを抱いて(これはお産は汚れたものとされ、産婦も汚れがついているとされたことから。また産後間もない母親の体力を気遣う意味もある)、母親も礼装で付き添うのが正式です。神社では初穂料を納め、お祓いをうけます。その後、親戚・知人を回って挨拶する習慣もあります。

■祝いのヒント

現在では、無事生まれたことを感謝し、赤ちゃんの健やかな成長と幸福を祈る行事とされています。生後一ヶ月くらいにするのが一般的ですが、赤ちゃんの体調と母親の回復状態を考え、暑さ、寒さなど天候も考慮し、家族でお参りするのがよいでしょう。
安産祈願のお礼参りをかねてという人もいらっしゃるようです。

【注 祝い着】白無地の一つ身の漬物の上に、男の子は黒地などの羽に重紋付き、女の子は友禅ちりめんの紋付きの祝い着が正式。

お喰い初め

一生食べ物に不自由しないようにとの願いをこめて、生後百日(または百二十日目)頃行なわれます。「箸初め」「歯固め」ともいい、赤ちゃんのためのお膳を用意し、食べるまねごとをさせます。祝い膳は、赤飯、尾頭付き鯛などの焼き魚、煮物、香の物、汁物などで、地域によっては、歯が丈夫になりますようにと、小石を置く慣習もあります。食器は漆器が多く使われ、男の子には朱塗りの器、女の子には外側が黒塗り、内側は朱塗りのものを使う習慣もあります。食べるまねごとをさせる役は、長寿にあやかるように、近親者のなかで最年長の人に引き受けてもらいます。

■祝いのヒント

お膳にのった料理は赤ちゃんには食べられないので、野菜スープや果汁など赤ちゃんの食べられるものも用意しましょう。高価な漆器をそろえなくても、ベビー食器など今後離乳食で使う食器で充分です。お祝いの日には、祖父母や親戚などごく親しい人に集まってもらい、順調に成長してきた赤ちゃんを囲んでお祝いをすることが多いようです。

初節句

生まれて初めて迎える節句で、女の子は三月三日(桃の節句・雛祭り)、男の子は五月五日(端午の節句)です。古くは中国から伝わったとされる節句は、この日に神に供え物をして、無病息災を願って、除厄をする風習です。もともとは、三月の桃の節句も五月の端午の節句も男女の別はなかったようですが、江戸時代頃から、豪華な雛人形は女の子の祝いに、五月の場合は菖蒲(しょうぶ)を使うことから、勝負に通じて武士の男の子のお祝いとなっていったようです。

女の子には雛人形を、男の子には武者人形や鯉のぼりを、母方の実家から贈るのがしきたりです。雛祭りの膳には、ちらし寿司・蛤のお吸い物・菱餅・雛あられなど、端午の節句には、粽(ちまさ)・柏餅が付きものです。また、お祝いの日が生後間もない場合は、翌年に回す事もあります。

■祝いのヒント 

住宅事情もあって、鯉のぼりや人形飾りはコンパクトなものが好まれるようです。祖父母や親戚など親しい人を招いて、ちらし寿司などのお料理、お節句のお菓子などで祝います。高価なお人形が無くても、卓上のかわいい置物や手作りのもので、心づくしのお祝いもよいものです。

初誕生

かつて日本には、毎年の誕生日を祝う習慣はなかったので、赤ちゃんが生まれて一年たった初誕生だけは盛大に祝いました。やっと歩けるようになったころです。一生餅、祝い餅、力餅などとよぶ餅をつき、これを子どもに背負わせます。一生餅は一升(米10合、約1・4キロ)の餅で作られており「一生持ち」の語呂合わせです。歩かせたり、わざと転ばせたりと地方により違いはありますが、子供が健康で強く、なに不自由なく暮らせるよう願う行事です。一生餅は切り分けて、親戚、縁者、ご近所におすそ分けします。このときに道具選びといって、そろばん・ハサミ・定規・筆・お金などを並べて選ばせ、将来の職業をみる地方もあるようです。

■祝いのヒント 

一本のろうそくを立てたケーキやお赤飯で祝うお宅が多いようです。一升餅の風習も結構受け継がれています。お餅の代わりに、もち米や砂糖を風呂敷に包んだり、子ども用リュックに入れて背負わせるお宅もあるようです。子どもの成長の節目として、手形・足形をとったり、身長・体重測定をしたりするのもよい記念となります。

七五三

室町時代から行われていた三歳の髪置き、五歳の袴(はかま)着、七歳の帯解(ひもおとし)の祝いが七五三の起こりです。三歳の髪置きの祝いは、それまで剃っていた髪を伸ばしはじめる祝い。五歳の袴着の祝いは、初めて袴をはく祝いで、平安時代は女子も袴をはいていたため、男女ともこの儀式を行っていました。七歳の帯解(帯直し)の祝いは女の子の祝いで、それまで着ていた付け紐のついた着物を、紐のない小袖にして初めて帯を締める祝いです。子どもの成長の節目とされている、この年齢の十一月十五日に神社に参拝し、子供の成長に感謝し、将来の幸福を祈願します。

■祝いのヒント

現在では、一般には女の子は三歳と七歳、男の子は三歳と五歳で七五三の祝いをします。男の子は五歳だけのこともあります。昔はもちろん数え年でしたが、今は満年齢で行なうことも多いようです。十一月十五日にこだわらず、その近辺の都合のよい日でよいでしょう。最近では、写真館や貸衣装店などで衣装レンタルや記念撮影がセットになったものを利用する人も多いようです。

= その他の行事

初正月

赤ちゃんが始めて迎えるお正月が「初正月」。数え年で年齢をあらわしていた昔は、生まれた年を一歳として、正月を迎える毎に一つ年を取る事になっていました。そこで初めての正月、赤ちゃんが数え年で二歳になるというお祝いが初正月です。既に離乳食が始まっている赤ちゃんには、家族用のおせち料理の他に赤ちゃん用のものを作ってあげるのも良いでしょう。初正月の習慣には、邪気を払って健やかな成長を祈るという願いを込め、厄除けや縁起物(男の子には破魔矢や凧・女の子には羽子板や手毯など)が妻の実家や親類から贈られます。

稚児行列

お寺の御開帳や寺社の新改築などの祭礼に合わせて行なわれることが多く、化粧をし、着物・袴や冠などをつけた子どもが行列に参加します。赤ちゃんから小学校低学年くらいまでですが、稚児行列によって、対象年齢は様々なようです。三回参加するとよいことがある、といわれる地方もあるようです。