ベビーフード

うまれてくる子どもの数がへっているというのに、ベビーフードはよく売れ、次々と新商品が開発されて、売り場の棚全体がベビーフードのコーナーになっているとこるもたくさんあります。ベビーフードがこれだけお母さんたちに受け入れられている現在、よいわるいではなく、製品についてよく知り、かしこい選びかたやじょうすな使いかたを考えることが必要となってきたといえるでしよう。

離乳の指導は、厚生労働省の「離乳の基本」がもとになっています。むかしは1歳のお誕生日をめやすに離乳を終えるように書かれていました。そのため、目安どおりに食べてくれないと、遅れているのではないかと悩むお母さんがでてきます。それが、アレルギーの赤ちゃんが増えたことなどもあり、平成7年に改定されました。

この改定では、離乳期間が3ヶ月のびて生後15ヶ月までとなり、指導の中にはじめてベビーフードが登場しました。離乳後期には鉄分強化のベビーフードを使用するなどの工夫がのぞましいとされ、ベビーフードの利用を推し進めることになったのです。一方、いまだにべビーフードについて、誤解や偏見もあります。祖父母の世代を中心に、「手作りがよい」「味覚形成上」「母子間の愛情面」など、子育ては母親のこまやかな心配りが一番という、昔ながらの育児観がいぜんとして根強いことがうかがえます。もちろん、これらを否定しているのではありません。しかし、ベビーフードをじょうずに利用すると、時間的にも気持ちの上でもゆとりが生まれ、赤ちゃんとふれあう時間が増やせたり、育児の負担を軽くすることができるのではないでしょうか。

じょうずな使い方

ある調査では、手作りで離乳食を作るお母さんの過半数が、基本よりも固めに調理していたという結果がでています。月齢に見合ったベビーフードは、材料の大きさや柔らかさ、とろみの具合などのよいお手本となります。しかし、メーカーによる差やメニューによるちがいなどがあるので、それぞれの長所、短所を知ることが、上手に使う近道です。離乳食は味に変化がつけにくく、手作りだと結局おとなの取り分けや、同じような献立の繰り返しになりがちです。そんなときにべビーフードのホワイトソースやフルーツペーストなどを混ぜたり和えたりすることで、目先のかわった一品になります。アレルギーのある赤ちゃんの場合、離乳食つくりにも神経をつかいますが、アレルギーをおこす材料を取り除いてあるベビーフードを使えば安心ですし、お母さんもときどきは気を休めることができるでしょう。通院や仕事の都合などで、お父さんや他のひとに赤ちゃんを預けるときも、ベビーフードが準備してあれば、食事どきまでに帰らなくてはならない気ぜわしさがなくなります。また、急な外出や忙しいときにいつでも使えます。防火リュックの中にも忘れずに入れておきましょう。

■安全について■

赤ちゃんが食べるものなのに、何年も何ヶ月も品質が変わらないのは不自然だと考えるお母さんがいます。保存料は入っていないのかしら、使われている材料は安心できるのかしらと、心配になるのは無理のないことです。ベビーフード業界には「日本ベビーフード協議会」という団体があります。ピジョン、キューピー、和光堂、明治屋(ガーバー)、雪印乳業、明治乳業、森永乳業の7社が加盟しています。ふつうに売られているベビーフードは、この業界団体の自主基準にのっとって作られています。

合成保存料はつかわない、放射線があてられた材料は用いないなど、材料の安全面でも、衛生面でも、一般の加工食品よりきびしい基準が定められています。表示についてもことこまかに基準があり、安全性にはまず問題がないとおもってよいでしょう。食中毒が心配な夏場などは、食品もいたみやすいし、まな板や庖丁など調理器具の消毒のことをおもうと、ベビーフードのほうが安心できるというお母さんもいました。

べビーフードに頼りすぎない

便利なべビーフードですが、もちろん問題はあります。栄養のバランスをもとめるあまり、一つのメニューにいろいろな材料が入るごった煮風になってしまい、素材そのものの味やうまみを赤ちゃんが覚える機会をうしなう心配があります。材料も、じゃがいも、にんじん、魚なら自身のタラなど、おなじみの素材にかたよっていて、夏ならトマトやきゅうり、冬なら白菜やブロッコリーなど、季節や土地柄にあった食べものを赤ちゃんに経験させることができません。つぎに、包装です。開封後の保存がきかないので小分けされているものが多く、安全面から何重にもパックされていますので、使ったあとはたくさんのゴミがでます。ゴミの減量が叫ばれているなか、省資源に逆行する商品といえなくもありません。簡易包装や、よく使うのであれば、大袋にはいった徳用タイプを選びましょう。

そして、食習慣にあたえる影響です。ベビーフードをよく利用するお母さんは、加工食品への抵抗があまりなく、即席麺や清涼飲料水の利用頻度がたかいという調査結果があります。また、離乳期に、子どもにだけパックにはいった別の食事を与えることに慣れてしまうと、今問題になっている個食や孤食の習慣につながりかねません。これはベビーフードという製品がわるいのではなく、使うほうに原因があります。「手抜き」 と呼ばれないためにも、ベビーフードにたよりすぎないことが大切でしょう。