女の子の名づけのPOINT

女の子の赤ちゃんの名前は、男の子の名前以上にバラエティーがあり、センシブル(感覚的)で、しかもフィーリングのすばらしいものがあります。これまで名づけられていた伝統的な「○○子」「○江」といった止め字を使った2字や3字の表記のほかに、最近では漢字での1字表記や、3字表記で読みを工夫したものが多くなっています。また、男の子の名前にはあまりみられない、ひらがな表記、カタカナ表記が多いのも特徴です。さまざまな工夫を凝らした最近の名づけ方の傾向をみると、そこには父親の女の子に対する特別な思い入れが感じられます。たとえば、嫁いでいく娘がいつまでも実家を忘れないようにと、実家の名字を1字、もしくは偏(へん)や旁(つくり)を残して名付けたりすることもあります。名字が佐藤だとしますと、「佐藤」の「佐」の人偏をとって「優子」あるいは 「侑子」としたり、「藤」の草冠を入れて「莱荊」とか「芳子」と名づけたりする人もいます。こんな女の子に育ってほしい、という親の願いを込めた名前のほかに、漢字の意味にとらわれず、読みや響きのよさ、漢字のもつ字面の美しさによるイメージを重視したものまで、さまざまな名づけ方を提案してみました。女の子の名づけのたいせつな要素として、
①清らかさ、愛らしさ、美しさ
②やさしさ、あたたかさ、明るさ
③感性の豊かさ、値性に高さ、正しさ
④華やかさ、清潔さ
⑤家庭を守るしっかりした性格、芯の強さ
⑥読んで快い響き
などがあげられますが、これらのいくつかの要素がお互いに関連し合います。男の子の名前が、おおらかさ、スケールの大きさ、強さ、頼もしさ、リーダーシップ、誠実さ、堅実さ、学業や世の中に出てからの成功といった、競争社会で生きていけるような願いが込められているのに対し、女の子の名前は、やさしさ、美しさ、感性の豊かさなどが重要視されます。また、女の子の名前の特徴として、男の子の名前よりも、止め字(名前の下にするのがふさわしい字)に使える漢字が多いこともあげられます。

音の響きと色彩

女の子の名前は、やさしさと美しさが強調されますので、名前に使う字そのものの意味よりも、音の響きや音のもつ色彩、フィーリングなどを考え合わせて名づけるとよいでしょう。日本語のもつ特性として、子音も母音の発音要素が強く響いて聞こえますので、そこに独特の音感が生まれます。また、力行以下の子音も、それぞれ独自の響きや色彩をもっており、組み合わせ方によって音感、色彩感が微妙に違ってきます。母音の五音と「ナ、マ、ヤ、ラ」行は、やわらかな響きとやさしさが伝わります。「カ、サ、タ、ハ」行は、シャープでいさぎよく響き、明るさが伝わります。たとえば、「利恵」(きえ、と読んでください)と名づけたとします。「きえ」という読みだとふつうは「貴恵」と表記しますが、「利恵」だと利発で明るく愛情に恵まれた女の子のイメージが伝わります。「りえ」と読ませる名づけも、もちろんすばらしいのですが、「りえ」ではなく「きえ」と読ませる工夫をしたところに注目しましょう。「キ」の音は、伸びやかさ(柔軟性)、集中力、強い意志などが伝わります。「エ」の音は、やわらかさ、やさしさ、おおらかさが伝わります。この2つの音感が微妙に響き合って、おてんばだけど明るく頭のよい、しっかりした女の子のイメージになります。

漢字1字の名前

女の子の場合、漢字1字の名前は男の子よりも少ないようです。女の子に漢字1字の名前をつけるときは、やさしい雰囲気をもつ、音の響きや色彩豊かな漢字を使いましょう。1字の名前をつけるときは、名字とのバランスがとくに要求されます。名字も1字、名前も1字だと、氏名2字で名字とまちがわれることも考えられますが、名前の漢字が3音読みで女の子らしければ、とくに心配することはないでしょう。最近は、1字の名前をふくめて、男の子にも女の子にも共通の名前がつけられるようになってきました。社会はしだいに男女差を問わないようになってきたことを考え合わせ、イメージやフィーリングがぴったりだったら、男女差にこだわらない名づけをしてもよいと思います。漢字1字の名前の例をいくつかあげてみます。

<訓読み>
葵→あおい 灯→あかり 晶→あきら 梓→あずさ 菖→あやめ 和→いずみ・あい 苺→いちご 笑→えみ・えむ 椛→かえで 薫・馨・香→かおる 芳→かおる 郁→かおる 鼎→かなえ 鴎→かもめ 雪→きよ・ゆき 絹→きぬ 晄→きらら 恋→こい 梢→こずえ  琴→こと 光→さかえ・てる・ひかる 桜→さくら 幸→さち・みゆき 椎→しい 栞→しおり 忍→しのぶ 偲→しのぶ 茜→あかね 暁→あき 麻→あさ 理→あや 杏→あんず 星→あかり 璃→あき 芦・葦→あし 綾・彩・絢→あや

<音読み>
娃→あい 愛→あい 藍→あい 庵→あん 苑→えん 杏・京・響→きょう 景・慶・圭・馨・慧・恵・京・杢→けい 彩・菜・采・柴→さい 舜・懐→しゅん 純・潤・淳・閏→じゅん 聖・憧・青→せい 蝶・寵・恰・暢→ちょう 風→ふう 唯・惟→ゆい 粕・楢・柚→ゆう 遥・瑛・耀・瑶→よう 倫・凛→りん 礼→れい 伶・怜・玲→れい・りょう 蓮・漣→れん

漢字2字の名前

漢字2字の名前には、2字2音の場合と、2字3音の場合、および2字4音の場合があります。

漢字2字を2音で読む名前

ひらがな、カタカナ表記の名前がふえていくにつれて、最近は漢字2字2音の名前も多くなってきたようです。たとえば、「愛」「蕗」「なな」「エマ」「マリ」といった名前を、「安依(あい)」「楓希(ふき)」「奈々(なな)」「絵莱(えま)」「莱荊(まり)」などと、漢字そのものの意味はあまり重要視せず、自由に当て字を使って名づける傾向にあるのです。このような名づけ方を、万葉がなふうの名前といいます。万葉がなふうの名前は、2音発音の美しさ、さわやかさ、リズミカルな歯切れのよさが第一の魅力です。さらに、漢字本来の意味から離れた独特の雰囲気で、2字2音の名前の新しさというべきでしょう。2字2音であれば、漢字2字をさまざまに組み合わせることができるので、独自の名前にする工夫がいっそう楽しいものになります。男女差にとらわれない名づけの風潮の影響か、「央(お)」「樹(き)」といった、男の子の止め字にふさわしいとされていた字が、女の子にも使われるようになったのも最近の傾向です。

<漢字2字を2音で読む名付け例>
亜樹→あき 亜湖→あこ 亜耶→あや 杏咲→あさ 亜美→あみ 伊都→いと 映那→えな 佳椰→かや 紀子→きこ 貴和→きわ 砂恵→さえ 紫央→しお 多恵→たえ 知咲→ちさ 奈緒→なお 菜々→なな 仁礼→にれ 仁奈→にな 音々→ねね 乃亜→のあ 野子→のこ 富葵→ふさ 芙咲→ふさ 麻衣→まい 麻季→まき 莱希→まき 莱湖→まこ 真帆→まほ 実佳→みか 深喜→みき 美彩→みさ 美々→みみ 眸衣→めい 芽里→めり 百音→もね 百々→もも 藻由→もゆ 悠理→ゆり 理恵→りえ 梨緒→りお 莉沙→りさ 理那→りな 瑠音→るね 麓美→れみ 和貴→わき 和湖→わこ

漢字2字を3音で読む名前

2字3音の名前は、これまでごく一般的な名づけ方でした。「恵子(けいこ)」「陽子(ようこ)」「雅恵(まさえ)」などがその例です。しかし、最近では「愛里(あいり)」「加鈴(かれん)」「佳怜(かれん)」というように、独創的でフィーリングを重要視した、外国ふうの読みの名前をつける傾向が強くなるなど、2字3音の名づけも多様化しているようです。そのいっぽうで、「恵子」「芳江(よしえ)「朝美(あけみ)」といった、これまでの伝統的な名づけ方も、まだまだ根づよい人気があります。2字3音の名前では、「恵子」「和紗(かずさ)」など、上の字が二音の場合と、「沙織(さおり)」「千鈴(ちすず)」など、下の字が2音の名前があります。発音のしやすさ、開きやすさの点では、2音連結している漢字のほうが強調されることが多いので、美しいイメージの漢字を考えるいっぽうで、音の響き、聞き取りやすさも考えて名づけることがたいせつです。

<漢字2字を3音で読む名付け例>
愛佳→あいか 朝路→あさじ 安莉→あんり 笑夏→えみか 夏純→かすみ 愛那→あいな 有弓→あゆみ 衣織→いおり 桜良→おうら 秦枝→かなえ 青葉→あおば 杏奈→あんな 羽蘭→うらん 和紗→かずさ 栞奈→かんな 潔音→きよね 咲莱→さきな 滋美→しげみ 敬美→たかみ 千遥→ちはる 七虹→ななこ 重絵→のぶえ 福美→ふくみ 円夏→まどか 真咲→まさき 美景→みかげ 充夏→みつか 明羅→めいら 泰葉→やすは 順恵→よりえ 伶香→れいか 若莱→わかな 琴音→ことね 紫園→しおん 園香→そのか 千種→ちぐさ 維代→つなよ 布恵→ぬのえ 英香→ひでか 帆波→ほなみ 美麗→みれい 美鶴→みつる 麦穂→むぎほ 萌里→もえり 悠美→ゆうみ 頼羅→らいら 楼沙→ろうざ
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